恋の門 (松尾スズキ) ★★★★

もともとは原作に忠実な、かなりヘヴィで限りなく「大人計画」テイストに近くなる予定だったこの映画ですが、クランクイン初日ファーストカット、松田龍平の芝居を見た松尾スズキが突如脚本の破棄を宣言、原作の設定だけを利用したアドレナリンギャグ映画へと即興で脚色。当初隠しキャラだったカメオ出演者を前面に押し出したコストパフォーマンスの高い笑いが満載となり、当然生じる現場のゴタゴタもそのゴタゴタっぷりがいい具合に映画に影響して、結果オーライとあいなりました。多分、当たらずとも遠からず。

羽生生純先生(こう書くと面白いな)のファンからしたら、色々いいたいこともあると思いますが、この原作を選んだ理由がなんであれ、ド田舎のちっちゃな映画館で、わずか10人ほどの観客――まず、間違い無く「大人計画」の舞台なんぞ、生で見たこと無い人ばかり――が、みんなドッカンドッカン声出して笑ってたんだから、大成功なんじゃないでしょうか。
自分も「大人計画」の舞台は、毎度の如くテレビを通してしか見たことないんですが、大受け。「テンポ悪い」って感想も結構事前に見てたんだけど、そうか? 結構ギャグのテンポは舞台の「大人計画」(ただしテレビで見た)まんまだった気がするよ。
ギャグも松尾スズキのいつも通りのセリフ回しとか、今回は出ない阿部サダヲの代わりに小日向文世がアレされるシーンとか(みんな、こういうシーンを楽しみに映画見にいったんじゃないのか?)、見たいもんが期待以上に見れたので大満足。
映画自体は、恋と門が狂言回しの地獄巡りならぬカメオ出演者巡り、という最近でいえば「IZO」みたいな映画なんで、「話すっ飛ばし過ぎ」とか「ラスト意味わかんねー」とか言ってる人にはそんなこと気にすんな、といってあげたい。ストーリーよりも片桐はいりの顔が大事な映画なんです、これは。ストーリー楽しみたきゃ原作読め。
という訳で、自分も色んなカメオの人を一生懸命探してた訳ですが、残念だったのは、コミケのシーンで山本直樹御大のあまりの異形ぶりに驚愕してしまったせいで、同じコミケシーンにいたらしい、町田ひらく師匠の姿を発見できなかったこと。そんなんもあるんで、多分DVD買うんだろうなあ。