The Bow (キム・ギドク) ★★★★

 日本ではまだ公開されていないけど、キム・ギドクの前作「空き家」はちょっと微妙な作品だった。何が微妙って、映画自体はいつもの通り「愛と暴力」についての映画なんだが、その暴力発生装置が「スポーツ」、しかも英題"3-iron"(3番アイアン)から分かるとおり、主に「ゴルフ」だったから。
 自分のゴルフへの偏見かもしれんが、キム・ギドクとゴルフという組み合わせはちょっと、いやかなり萎えた。実際、主人公が路上でゴルフボールをパコンパコン打っていると、走ってきた車のフロントガラスを突き破り、その車が道路脇に突っ込んで事故っちゃう、と戦後間もない頃の4コママンガみたいなシーンがあって驚愕。いくらなんでもそりゃないだろ、と思ったとさ。
 それで、この最新作。タイトルから分かる通り、今回は「弓」。「ゴルフ」みたいな回りくどいことにはなりえない、まさしく直球勝負の武器である。



 物語は、海に浮かぶ1隻の小さな釣り船に住む老人と少女の話。ある日、船を訪れた一人の少年と、少女は恋に落ちる。が、老人は二人の付き合いを許さない。どう許さないかというと、少年に向かって弓矢をバンバン発射。リアル蜘蛛巣城。なんとか無事逃げおおせた少年は、少女の実の親に関する情報を知り、再び船に現れる。真実を知った少女は少年と共に船を出て行くことを決意。当然、それを許さない老人は、釣り船の客に向かって弓矢をバンバン発射。気分はもうスコーピオン。それでも少女の決意が固いことを知った老人は、二人が出て行くことを許すのだったが…
 という、ぶっちゃけると三角関係のお話なんだが、一人がジジイというのがポイント。しかもこのジジイ、前述の通り嫉妬に狂って弓をバンバンぶっ放すわ、少女をお風呂に入れていやらしい手ツキで体を洗うわ、少女が出て行く段になると今度は○○しようとするわ、本当素晴らしいジジイなんである。ジジイバンザイ。あ、書き忘れてたけど少女と老人はセリフ一切無し。
 そして物語は、ギドクファンの一部納得、他理解不能のラストに向けて走り出しちゃう訳ですが、後は是非劇場で。冒頭に「空き家」と同じく「ハピネット・ピクチャーズ」のロゴが出てたんで多分上映するっしょ。