The Woodsman (ニコール・カッセル) ★★★★

 ありとあらゆる変態を嬉々として演じ続ける男、ケヴィン・ベーコン。その彼がペドファイル小児性愛者)を演じるのはある意味当然の帰結ともいえるが、さすがに題材が題材なだけに相当気合が入ったようで、この映画では「告発」以来となる実生活の妻キラ・セジウィックとの共演、そして自らexecutive producerも兼務*1している。
 ストーリー自体は前科者が人生をやり直そうとする物語で、刑務所から出所後、製材所に勤め真っ当な人生を送ろうとする主人公が、同僚からいろいろ詮索されたり、唯一好意を持ってくれた女性従業員といい仲になるものの前科を告白したらドン引きされたり、再犯の誘惑にかられたりするごくごく普通の話。ペドってこと以外は。
 この唯一好意を持ってくれる女性を演じるのが実際の奥さんキラ・セジウィックで、どうもこの女性と関係を持つ下りがペドなのにあまりにもスムーズなんで「リアリティが無い」という話もあるようだけど、実際の性的虐待加害者は肉親者が一番多いっつー話もあるように、妻子持ちのペドファイルというのはかなり多いらしいのである(そういえばトッド・ソロンズの「ウエルカム・ドールハウス」と「ハピネス」に出てくるペドファイルは妻子持ち)。そして当たり前の話だけど、一口にペドファイルといっても多種多様であり、この映画でのケヴィン・ベーコンペドファイルとして十二分にリアリティあるもので賞賛に値すると自分は思った。特に彼女に自分の前科を告白するシーンでの、相手の女の子の年齢を事細かに説明する下り(「12歳と聞いたけど実際は10歳だった」とか)や、その後思い出したように「I never hurt them. Never.」と付け加える当たりは「これは俺も言うね。…言うんじゃないかな。ま、ちょっと覚悟はしておけ」と思ったのは秘密だ(あ、書いちゃった)。
 そして終盤、とうとう職場でも前科がばれ、半ばヤケになったケヴィン・ベーコンの前に一人の少女が現れる。ここでの二人のやり取りは実際に見て欲しいんだけど、今書いてて思い出したのは、この映画って「裏ウィズ・ユー」なんだなってこと。多分。「ウィズ・ユー」てのはケヴィン・ベーコン知的障害者を演じる映画で(本当こんなのばっかりだな)ラストシーン、女の子と二人きりでいるところをペドファイルと間違われる話。このシチュエーションが本当のペドファイルだったら、てのがこの映画のスタートなんでないのか。知らんけど。まあ、何はともあれこの女の子(Hannah Pilkes)とケヴィン・ベーコン二人のシーンだけでも、一見の価値はあるんで日本公開の際は是非、って言ってもこのご時勢で公開はますます難しそうですな。
 Hannah Pilkesたん、ベーコン夫妻以外にも、保護監察官を演じるモス・デフが相変わらず達者な演技で素晴らしい。彼は趣味で音楽もやってるらしいぞ。



 この映画を実際に見たのはかなり前。なんで今さら感想書いたのかというと、前述の通り日本公開がますます無理っぽくなったことと、最近↓の本読んだから。

すべて忘れてしまえるように―少女監禁レイプ殺人犯と暮らした80日間

すべて忘れてしまえるように―少女監禁レイプ殺人犯と暮らした80日間

 途中何度も「うおおおおおおおおおおおっ」と叫びたくなったよ。

*1:そういえば「ワイルド・シングス」も… 自分のチンポを見せるため?