ワースト3位 「死霊のえじき2: Contagium」

監督:アナ・クラベル、ジェームズ・グレン・デューデルソン
 
 「映画は監督の物」と口で言うのは簡単だけれど、ジョージ・A・ロメロにとってこれほど空しい言葉は無い。
 まず、何よりデビュー作の「ナイト・オブ・ザ・リビングデッドからして、権利延長の手続きを失敗したせい(だっけ?)で現在パブリック・ドメインとなっていて、そのせいなのか、後にあの悪名高き「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド 最終版」が作られ、勝手に色がつけられた「カラー版」なんてものまで存在している(例のBOX買っちゃったけど)。「ナイト〜」の正式な続編が「ゾンビ」では無く「バタリアン」なことも周知の通り。
 そして「ゾンビ」。ダリオ・アルジェントが金だけじゃなく口と手まで出してきたので、「アルジェント監修版」が作られたのはまだいい。ロメロ自身が再三「ディレクターズカットじゃない」と言っているのにも関わらず、今だ139分バージョンが「ディレクターズカット」として流通していたり、ドイツでは全てのバージョンのシーンを勝手に寄せ集めた156分バージョンが「最長版」として売られていたり、「映画が監督の手を離れる」とはどういうことなのか、「ゾンビ」を見ると本当によく分かる。
 最後は「死霊のえじき」。これは以前、日本でゴアシーンが大部分カットされたどうしようもない最低バージョンが「最終版」として正式に売られていた(恐ろしいことだ)、という以外は、これまで比較的被害が少なかったのだが、2005年とうとう核爆炸裂。これが、ロメロのあずかり知らぬところで作られることになった、本作「死霊のえじき2」である。
 ストーリー・映像・演技・ゾンビの量・質、あらゆる面において我々の想像を遥かに上回るスケール・ダウンを見せ付けた本作は、世界中のゾンビファンをゾンビ化させること必至なので、JVD当たりがひっそりDVDを出しても、決して見ないことを忠告しておきたい。
 さらに恐ろしいことに、今後も「ナイト〜」の3Dバージョンリメイク、「死霊のえじき」のリメイクが控えている。これまでの情報では、どうも「ドーン・オブ・ザ・デッド」のようなまともなリメイクが出来る可能性は残念ながら低いと言わざるをえない。せめてロメロに金がたくさん渡って、新たなゾンビ映画が作られる一助となることを期待しているのだが、これまでのことを考えるとそれも望み薄か。