フライトプラン (ロベルト・シュヴェンケ) ★★

 ジョディ・フォスター演じる航空機設計士のカイル。彼女の6歳の娘ジュリアが航行中のジャンボジェット機から姿を消した。が、他の乗客、乗務員の誰一人として娘を目撃した人はおらず、乗客名簿にも娘の名前は載っていなかったのだった…
 どう見ても「フォーガットン」です、本当にありがとうございました*1
 と、一言いわずにはいられないプロット。「フォーガットン」ならこの後、空の彼方にジャンボジェットごとズバコーンしてしまうところだけれど、予告編を見た方なら大体想像できる通り、こちらのジャンボジェットは一応現実の地平に着陸する。が、その着陸ぶりは「超」が付くほど不用意で、何の適切な準備も無しに、ただひたすら真っ直ぐその滑走路に向かい淡々と突進していく。結果はもちろん全滅。これが180度回転した状態で屋根で着陸、摩擦で機長のヅラ炎上、ぐらいでもはじけていれば尊い犠牲の上に作られたバカ映画として称えられもしようが、このオチの「脱力プラン」ぶりでは全員犬死。
 というのも、このハリウッドに招かれたばかりでまだ長編3作目の新人ロベルト・シュヴェンケ監督は、「このつまらないオチを小手先のテクニックでどうこうすることは不可能」とばかりにオチを面白くしよう、という努力を一切していない(としか思えない)。その代わり、オチに至るまでのサスペンス描写にはかなり心血を注いだと見えて、そこまでは中々楽しめるものになってはいる。という訳でこの映画を一番楽しむ方法は、「オチが分かる寸前に途中退出」です。その時、あなたが予想したどんなオチよりもこの映画のオチがつまんないことを私は保証します。(が、予告編だけでこのオチ直前までの話はほぼ全て分かっちゃうんだけどな…)
 それにしても「ハリウッドでは映画化されずボツになった脚本の束だけで火力発電所が3基賄えるんだぜ、ジョン」という極上のアメリカンジョークを今俺が勝手に作ったけれど(でも、それに近い現状だろうとは思われる)、なんでこんなひどい(いやひどくもない。単につまらない)オチの脚本がジョディ・フォスター主演で映画化されてしまうんだろうか。脚本が気に入った、とかジョディはのたもうておるが、おぬしは機長に向かって「娘が見つかったら娘に機長として謝ってくれ」という癖に、お前自身が「人間として当然謝らなければいけない人」に謝ってないぞ? しかも、ラストご丁寧にその人が目の前にあらわれ、謝罪する絶好のチャンスがあるのに、それでも謝らんとは。あきれたよ。
 更に絶望が深いのは、この作品のプロデューサーは何とビックリ、ロン・ハワードとのコンビでお馴染みブライアン・グレイザーなんである。ハリウッドの中ではかなりまともなプロデューサーだと思っていた自分にはかなりショック。このショックをやわらげる為に無理矢理この映画を誉めるとすればフォーガットンの偉大さが再認識できる作品」といったところですか。それにしても俺って本当に好きなんだな「フォーガットン」。
 (追記)あ、そういえばもう一つ見所があった。若い頃の浅丘ルリ子がタイムスリップして出演してます。ルリルリファンは必見。

*1:本当は「バルカン超特急」とかなんだろうけど比べるのもかわいそうなんで。