ありがとう (万田邦敏) ★★★

 監督:万田邦敏、製作:仙頭武則の「宇宙貨物船レムナント6」コンビで送る阪神淡路大震災映画。
 今回は「レムナント6」で特撮監督だった樋口真嗣を欠くために、仙頭Pがなんと特撮監督を兼任。「そんな無茶な!」という声が一部で大噴出するものの、結果を見れば樋口監督の「日本沈没」よりよっぽど沈没していることが判明し、嬉しい悲鳴がそこかしこから噴出中。いや本当に特撮よかったよこれ。ある日突然、透明な怪獣が襲ってきた!という感じ。
 どうもこの映画、「ワールドトレードセンター」みたいな「実際にあったいい話」で気持ち悪い、と評判が良くないようなんだが、よくよく見れば後半部分のプロゴルファー挑戦編は、震災でゴルフバック一式が無事だったからという理由だけで一家の大黒柱が働きもせずゴルフと鍛錬に日々明け暮れて、おまけにプロテストを受ける費用に必要だからとなんやかんやで200万円妻に無心するという、前半が無かったらどう見ても言い訳の仕様の無い程ひどい男の話ですよ、これ。もしこの後プロテストに何年も不合格だったら、当然一家は離散、主人公はプロゴルファーを夢見ながらの孤独死ってのが目に見えてる訳で(そして死後「年月が経っても震災の爪あとは人々の心に深い傷跡を残し続けているのです」と紹介される)、「阪神淡路大震災」の映画化においてこの「事実」を選択したのはなかなかのセンス…だとちょっと思ったり。何にせよ、かなり変な映画なんで一見の価値あると思うなあ。