ドクトル・マブゼの呪い ―北杜夫 編―

えー、先日お知らせしました「ドクトル・マブゼの呪い」のお時間です。今日のテキストは高橋洋大魔王著の「映画の魔」。
この本の156p「限りなき犯罪の支配 マブゼ映画の可能性」という文章に、「ドクトル・マブゼ」(監督フリッツ・ラング)という映画がいかに恐ろしいか、北杜夫氏の具体例を中心にまとめられています。
以下、ドクトル・マブゼの続編「怪人マブゼ博士」を見た北杜夫氏の感想。

・・・私はテレビで「怪人マブゼ博士・怖るべき狂人」という映画を見た。そして、その映画がひどく気に入り、いわばマブゼに憑かれてしまった。というのも、当時、私は悪性の躁病のまっ盛りの時期でかなり異常であったからだ。・・・「どくとるマンボウ」なんて名前は、平凡でつまらぬと思った。そこで、少なくとも発狂中は、自ら「どくとるマブゼ」と名乗ることにし、その旨、紙に書いて応接間に貼り出した。そして、「怖るべき狂人」とは、まさしくおれのことだと悦に入っていた。(『マンボウ博士と怪人マブゼ』)

わたくし、不勉強ながら北杜夫氏の著作を拝見したことは無いのですが、「どくとるマンボウ」がこんなに狂っているとは、予想外でおました。さらに発狂は続き、北氏は自ら作詞・作曲した「マブゼの唄」を作ります。

あたちの名前はマブゼだじょ
どうだ皆ちゃんこわいだろ
西の国から東の国
マブゼマブゼで日が暮れる

・・・えー、この歌を北杜夫氏はレコード会社に持参して、すぐ発売しろ、と命令したそうです。(多分発売されてないと思う)
その後、北氏は賭博師でもあるマブゼにならい、カジノ代わりに株に手を出し全財産を失います。
そして、自宅を独立国家と宣言し、"マブゼ"という通貨まで発行。

この文を打ってるだけで、手が震えますね。北杜夫がこんな凄い男だったなんて、みんな知ってました? 有名な話なんでしょうか?(俺は知らなかったぞ)

当然、この呪いは魔王高橋洋にも及び、この映画を見た当時(昭和60年頃)のメモには以下の言葉が書かれていたそうです。

毎日「マブゼ」を見ていれば、私は間違いなく偉大な人物になれるのだ。「マブゼ」を見たとたん、私は本来の私に戻る・・・、つまり世の中のことなど本気でどうでもよくなる。

はうあ、すげえ。ここまで人を呪い狂わす映画「ドクトル・マブゼ」シリーズ。
というわけで、クリスチャン・スレーターわかったか? 軽々しく口にすると呪われるぞ。
…あ、遅かったか。

てか、「マブゼ」って何? 一体誰よ、という方はこの本をお買いになるか映画を是非ご覧になって下さい。
映画を見たい人は、日本盤はでていませんが、フリッツラング監督による1〜3作目は北米盤で出ています。ちなみに自分が所持しているDVDはリージョンフリー。(今違ったらごめん)

以下のイベントで特別上映会もあるようです。

2004年10月30日(土) 高橋洋の新作『ソドムの市』公開&映画評論集「映画の魔」出版記念
特別企画「映画の魔をいかにして呼び出すか」
http://www.athenee.net/culturalcenter/schedule/2004_sche/cineclub08_12.html

ゲストには柳下毅一郎氏もくるらしいんですが、今日現在ホームページでは、ブロッケン塩彦こと「塩田明彦監督に交渉中」の文字が・・・
交渉失敗したんなら、すぐ直しといたほうが。なんにせよ、高橋洋の8ミリ作品見たいなあ。

(追記:直りました)