親切なクムジャさん (パク・チャヌク) ★★

 パク・チャヌク監督「復讐三部作」の一応完結編(どうせ、またやるよね?)。以下、ネタバレ気味。
 1作目の「復讐者に憐れみを」で見事な「復讐アルゴリズム体操((C)ピタゴラ・スイッチ)」を、2作目の「オールド・ボーイ」で「超巨大復讐アトラクション」を描いたパク・チャヌクが完結編で挑戦したのは、・・・えーと何?贖罪?食材?食えんのそれ。
 復讐される男・復讐する女・復讐方法、どれを取っても予想を遥かに下回るスケールの小さいつまんない話で、終始退屈しながら見た。いや俺、チェ・ミンシク演じるペク先生は、名前からしても絶対ペドだと見る前に思い込んでいて、周知の通り「ペド・ソ連北朝鮮は映画界三大悪玉として、どんなに酷く描いてもコラッて怒られない、という国際法上の取り決めがあるので、復讐相手にペド野郎を配置したらパク・チャヌク先生は当然、ペニスをチェーンソーで切り取った後ミキサーでグリグリすり潰したジュースを無理矢理飲ませる、位のことはやってくれるだろうと思っていた自分は、完全に拍子抜け。
 いやもう、ストーリーも最初から最後まで分からないことだらけだったんだけど、誘拐した子供を「子供嫌い」だからって理由ですぐ殺しちまうような極悪人が、なんで主人公との取引を律儀に守って人質に取った子供を養子に出してんの? 出した、というアリバイだけ作っておいて実は殺してた、とか実はペドで13年間慰み者にしていた、という展開が普通じゃないのか?(普通って何だ)
 復讐方法も、13年間周到に考えていたとは思えない行き当たりばったりぶりで、えーお前は被害者家族に止められず指全部切り落としたら、その後ピストルどうやって撃つつもりだったの?とか、刑務所仲間を発見したペク先生のもとに嫁にいかせるのは、そこだけ突出して酷すぎねえか、とか。極悪人なんだろ?顔光らせりゃいいのか? 実際DVバンバンだし。だもんで、最後は絶対この女性が登場人物を全員皆殺しにするんだ、という期待だけで最後まで見てたよ、俺は。違ったけど。
 で、後半さすがにこれじゃ復讐も盛り上がんねーな、とさすがに監督も思ったか本当付け足したように被害者が増えて、被害者家族によるフリッツ・ラング「M」の人民裁判もどきなシーンが展開されるにつけ、こんなのやるならやっぱり犯人はペドにすべきだったとの思いを更に強くした次第。(BGM「ペドをあきらめないで」by岡村考子)
 ようするに、ギャグに混じった監督の「ここはスルーしてちょ」光線を1作目、2作目では「よっしゃよっしゃ、スルーしたるでぇ」と気前良くおおらかに受け止められたのに、今回は全く受け付けなかった。それは何故かと尋ねたら、やっぱり下手に「オールド・ボーイ」が賞取っちゃったせいなのかなぁ。受け手に取っても監督にとっても。