Tristram Shandy: A Cock and Bull Story (マイケル・ウィンターボトム) ★★★★

teskere2006-09-13

 あらゆる小説のお約束事を一から十まで馬鹿にしたロレンス・スターンによる奇書「トリストラム・シャンディの生涯と意見」*1が遂に映画化。
 とすれば当然その映画は、映画のお約束事を一から十まで馬鹿にした物になるはずで、冒頭のシーンがトリストラム・シャンディ役のスティーヴ・クーガン(「24アワー・パーティ・ピープル」のトニー・ウィルソンね)が楽屋にてメイクで鼻を高くしている最中だったり、子供時代に2階の窓から小便をしている途中、窓が落ちてチンコがはさまれ雄叫びをあげる回想シーンでは、トリストラム・シャンディ本人が登場し、子役の演技に駄目出しするものの、子役に「じゃあおまえがやって見せろ」と喧嘩になったり、突如始まってすぐ終わるスティーブ・クーガンのインタビューでは最後に「このインタビューの完全版はDVDの特典映像で!」(実際、収録されてた)と紹介されたりすることは当然想定内なものの、マイケル・ウィンターボトムのデビュー作「バタフライ・キス*2」からの盟友フランク・コットレル・ボイスの脚本はなかなかにツボを押えた代物で、最初に監督だと聞いた時は「もっとバカ映画の分かる人だったらいいのに…」とガッカリしていたウィンターボトムの、あくまで「古典文学の映画化」であるという点を忘れない(実際そうだしな)演出とあいまって、今までになかった新種の「バカ映画」として一見に値する。もちろん、映画の最大のお約束である「上映時間が2時間前後」はきっちり守られている訳で(黒沢清はこれさえ守れば映画だ、言ってたな)、本当なら「2時間と思わせといて10時間」位やって欲しいという気持ちも無くは無いが、さすがにそれは不可能なので、まあここいらがいいとこなんじゃないでしょうか。
 てか、これっていかにも日本で受けそうなのに、なんではやいとこ公開しないんだろう?

*1:漫画で言えば唐沢なをきの「カスミ伝」ね。

*2:大好き。