フランドル (ブリュノ・デュモン) ★★★★

 (昨日の続き)で、実は先日「松ヶ根乱射事件」を見たばっかりということもあり、山下敦弘向井康介パリ、テキサス、守口」は是非とも見たいなあ、これ見てから六本木に行こうかなあ、多分ギリギリ間に合うし、でもさすがにそりゃあ失礼か、などと色々考えていたものの、思わぬ時間の延長により考えるまでも無くBプロ終了直後、下北沢から六本木へ向かう。
 が、井の頭線小田原線どっちが近いのか分からない。とりあえず、大江戸線乗れば大丈夫だろ、ということで小田急のって新宿へ。つい乗り場近くの新宿西口駅から大江戸線に乗ったところ、都庁前で乗換えがあることを知り愕然。「線」じゃねえじゃん!新宿まで歩くんだった。結果9時30分からの上映なのに、六本木駅到着は9時15分。こっから結構遠いのにこりゃやばい、と全速力で走る。走りながらも流れる景色を眺めつつ、下北沢→六本木ヒルズへの移動を経て格差社会を実感(余計なお世話)しつつ、無事23分、TOHOシネマズ六本木ヒルズに到着。発券機を発見(駄洒落)するまで若干手間取るものの、無事発券・入場・着席を済まし、リメイク「サランドラ」第3弾は、日本での映画公開を求めて食人一家がこの映画館に立てこもる"The Roppongi Hills Have Eyes"てのはどうだ(駄洒落)と、余裕で上映開始を待つ。
 で、何で日本公開も決まってるこの映画をわざわざこんなに苦労して見に来ているかと言えば、ブリュノ・デュモンの前作"Twentynine Palms"が、ここ4,5年で見た映画の中でダントツに「見たことを後悔するほど嫌な映画」だったから。今の評価は「21世紀の『悪魔のいけにえ』」、詳しく言えば「『悪魔のいけにえ』の冒頭10分を110分に、それ以後の70分を10分にした映画」ということに落ち着いており、この新作もフランスでDVDが出たら買おう、と思っていたのでこの上映予定を発見した時は、俺に見ろということに他ならない、と思ったわけですよ。
 で、結果映画はどうだったかというと、ビックリすることに「戦争映画」だった。いや正しくは「戦場」部分は30分あるかないか、といった程度なんだが上映時間はわずか90分なので、3分の1あれば立派な戦争映画だろ、という判断。毎度の如く、ブリュノ・デュモンは「爽快感皆無な暴力」を描くことに固執しているので、映画史上随一といってもいいほど、全く血わき肉踊らない戦争映画として圧倒的な完成度で、そのダウナーレベルは「ジョニーは戦場へ行った」の戦場を描かなかったことにより到達したレベルにまで達しているかもしれない、と感心する。「反戦」といったレベルのイデオロギーが皆無なのも凄い。まあ、相変わらず商業性も皆無なので(隣で見てたカップルがちょくちょく「何、この映画?」といった会話をしているのが面白かった)全然お勧めはしないけど、間違い無く他に変わるものが無い映画。ついでに"Twentynine Palms"も公開すればいいのになあ。
 終了後、帰ろうとしたら客があんまり動かない。何でかなと思ったら、どうも舞台挨拶と監督のQ&Aがあるらしい、ということをその場で知る。…が、俺が今泊まってるホテルは門限が12時*1なので、泣く泣く映画館を出る。入口で主演の二人が入場待機していた側を通って出て行ったんだけど(今考えれば凄い迷惑な奴)、女性の方は映画では正直そんなに美人だと思わなかったのに、間近で見たら本当に光り輝いていてビックリした。この映画に出演した時は素人だったらしいけど。それと今にして思えば、上映終了間際から入ってきて客席を見上げていたオッサンはブリュノ・デュモン監督だったのだなあ、と帰る途中に納得する。ああ門限。

*1:おじいさんとおばあさんだけでやってるんですよ、そのホテル。が、部屋が広いのと地理的条件は絶好だったのと前払いしちゃった等の理由で、そこにずっといた。今思えば健康に過ごせたのは門限のおかげ。ちなみにネット回線も何かフィルターが付いているらしくどうしよう、と思ったのだけれど、結果自分が見れなかったページはm@stervisionだけ、というVSm@stervisionブロック付き。