大日本人 (松本人志) ★★★

 「大日本人
 これは左右対称の美しい字面と共に「代日本人」や「第二本陣」の意味を持ち、また「Die 日本人」というメッセージも込められ、更に「アイダホニンジン」のアナグラムでもあるという*1非常に秀逸なタイトルである。このタイトルが決まった時点でこの映画の成功は9部9厘決まった。
 …正直、褒め辛いんで、まだ褒めやすいタイトルを適当に褒めてみた。いやあ、ケチを付けようと思ったらそれこそ一昼夜グダグダ文句が言える未熟な映画で、殊能センセーの罵倒*2にもおおむね同意(でも、さすがにセンセーそろそろ新作出して下さい)。特に気になったのが、ドキュメンタリー部分の不徹底さで、何でこんなカット挿入するんじゃ、と度々イライラしたし、儀式のダメ出し等、時々前にしゃしゃりでてくるくせに何をやりたいのかさっぱり分からん未熟なインタビュアーが不快。
 映画としては、「大日本人と赤いヤツの初戦」をドキュメンタリー撮影前に設定して、このインタビュアーを最初から大日本人と赤いヤツとの再選をコーディネイトするUA防衛庁の刺客とすればえらく見やすい映画になったと思うんだが(というか「今そっちに向かいました」の瞬間、そう勘違いしたんで)、やっぱりそういう分かりやすい縦糸を通すのは松本人志的に駄目なんだろうか。つーか、お前分かりやすいっていってたじゃん。「壊す」とか言ってたけどその為にももっと形あるものを2時間かけて積み上げないとボロ屋ひっくり返したって大して見栄えはかわりゃし無いんだっつーの。もっと観客引っ張る努力もせーよ。他にも五代目の死亡の状況とか(俺は普通に六代目が初めて巨大化した際に踏み殺したんだと思って見てたが)娘が七代目を継ぐのか、とか面白くなりそうな要素が結局ほっとかれちゃうのも残念。あ、儀式の「入りました」は予告を見たときから、ケツに何か入れてるもんだとばかり思ってたんで実際は入ってなくてこれも残念。
 全体の内容としてもオジンガーZ他多数のヒーロー物パロディとか巨人殺人とか、獣のデザインが一時期松本が凝っていた写真合成の3D版であるとか、これまでの集大成、悪く言えば大して新しいことなど無いっちゃあ無いし、松本が大好きなカノンの真似事までしちゃうという有様なんだが(これはさすがに頂けなかった。そのまま次のシーンいけよ)、やっぱり金がそれなりにかかってるだけあって、特撮CGパートはそのチープさも含めかなりの力作で見ごたえがあったし、何より終盤の大好きな折り畳み傘を雨の中差して上機嫌に歩くシーンは今思い出すと物凄く良いシーンな気がする(音楽のせいで見たときはそんなでもなかった)。あのシーンのためだけにでももう一回見に行きたいと思う自分がいるんだがどうだろう。