「ボーン・アルティメイタム」の脚本家が消された件

 興行・批評両面で、これ以上はありえ無いほどの大成功をアメリカで収めた「ボーン・アルティメイタム」であるが、事前に情報のあった脚本家二名が完成した本編クレジットでは名前が無い*1
 一人はトム・ストッパード。言わずと知れたシェイクスピアオタクで、「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」を監督し、「恋におちたシェイクスピア」の脚本を書いた男。他、有名どころでは「未来世紀ブラジル」の共同脚本、ファスビンダーの「デスペア*2」の脚本も書いた才人である。「アルティメイタム」の脚本に彼の名前を見つけた時は驚きかつ興奮したものであるが、結局の所クレジットはされず、ということで少しガッカリ。まあ批評をサラリと読む限り余計な要素が皆無で前作以上にえらくストレートな映画に仕上がっているようなので、ストッパードの入る余地は無かったということか。
 もう一人はポール・アタナシオ。傑作刑事ドラマ「ホミサイド 殺人捜査課」のクリエイター兼メインライターで、最終シーズンまで最多の108エピソードを執筆した男。映画では「フェイク」「クイズショウ」「トータル・フィアーズ」「さよならベルリン」、今後は「エデンの東」リメイクと硬派な作品がズラリ。
 それにしてもこの「ホミサイド」ってドラマは(てかオレはまだ1stシーズンしか見てないんだが)本当に傑作で、アメリカのドラマにアレルギーが無ければ「ザ・シールド」と「ホミサイド」は刑事ドラマの双璧なんで絶対に見るべきである。「ザ・シールド」2ndシーズンの1話を見たときには、素でテレビに向かって「オーマイガッ」と声が出た。ああ、脱線。とにかく、こいつがいるならアルティメイタムは傑作に間違いないぜ!と思わせる人選だったんだが、結局未クレジット。もちろん、ハリウッド映画のクレジットが単に書いた書かないではないと分かっているつもりだけど、こいつは本気でガッカリ。
 結局残ったのは、シリーズを通じて登場のトニー・ギルロイ。もちろんこれは良いんだが、次のスコット・Z・バーンズって人は何故か「不都合な真実」のプロデューサー。そして最後のジョージ・ノルフィって脚本家のフィルモグラフィー「タイムライン」「オーシャンズ12」「ザ・センチネル 陰謀の星条旗とある意味驚愕の作品がずらり。これで心配するな、という方が無理でしょう。もちろん、もう既に大評判なんだから心配する必要はないはずなんだけどな。