宇宙ブルーカラー戦争

今回のスピ版「宇宙戦争」はトライポッドが遥か昔から地球内部に埋まっていた、てのが原作(前作)との大きな違いな訳ですが、この変更が何ゆえに行われたかというと、まぁ普通に考えれば単に地中からいきなりバンバン出てきたほうが空からヒュンヒュン飛んでくるより怖ぇ、というスピルバーグの演出意図と考えるのが妥当なんですけど、もう一つ、やはり「未知との遭遇」・「ET」との連続性があると思うですよ。スピルバーグは単に「未知との遭遇」・「ET」の宇宙人が善玉で、「宇宙戦争」の宇宙人が悪玉だとは描きたくなかった。故に考案されたのが、地中に埋められたトライポッド。
つまり、前者にとって「地球」は初めて訪れた惑星で、彼らにとっても宇宙探検のフロンティアだった。だから当然やってきたのは、その宇宙人を代表するエリート集団であり、当然未知なる生命体との接触・交渉をする命も受けているはず。それ故に、我々は彼らとコンタクトを取ることに成功したのだ、と。
しかるに、今回の「宇宙戦争」では、彼らは地球人類が文明を持つ以前から、この星を発見していた。つまり、彼らにとって「地球」は奪うまでもなく、元から「自分たちのもの」という感覚があったと思われる。
冒頭のナレーションで「ずっと監視していた」うんぬんの下りがあるんだけど、正直これは嘘だと思う。モーガン・フリーマンが喋ってるからといって、何でもホイホイ信じてはいけない。それは罠だ。彼らは「監視」すらしていなかった。自分が予想するに、この地球は開発が何らかの理由(大して資源が無いとか)で中止になった惑星であり、長い間放置されていた。もしかすると、人類の祖、というか生命体をこの星に誕生させたのも彼らかもしれない。開発中止決定後、政府が業者にこの辺境の惑星の管理を委託したところ、その業者がまれに見る悪徳業者で、管理料だけは毎年頂戴するものの、全く管理活動を放棄していたのだ。ところが、長い年月が過ぎ状況は一変、地球の再開発計画が復活! あせった悪徳業者のボンボン(152代目)は、政府調査官が現地入りするまでの10日間に何とか地球表面を以前の更地に戻すよう、全社員に命じた。これが「宇宙戦争」の実態だったのである。
宇宙戦争」のよくある感想で、「トム・クルーズが冒頭クレーンを操作してたのは、トライポッドを乗っ取る伏線だと思ったのに!」てのがあるけど、これは多分スピルバーグの意図としては逆で「これから出て来る宇宙人も、このクレーン操作をしているトムみたいなブルーカラーなんですよ」ということだと思う。
そう、トライポッドが地球に埋められていたのは、開発再開の日に備えてであり、つまりその実態は 「トライポッド=ユンボ」 だったのだ!(間違ってもウォーマシンでは無い)
そう考えると、途中人間をポイポイ拾ってる奴等も、「本当に食うにも困ってるから」かも知れず、結構悲しい。そして最後はやっぱり食あたりしてしまうのだ。ラストのモーガン・フリーマンのナレーションも当然嘘八百であり、本当は悪徳業者のボンボン(152代目)の会社が長年の悪行を暴かれ潰れちゃったからである。徹頭徹尾、人類はこのユンボに対して何ら抵抗できなかったのだ。ユンボ恐るべし。