TAKESHIS' (北野武) ★★★

 で、もう一本のバカ映画。
 当然、こちらが事前に期待していたのはたけしの挑戦状 THE MOVIE」、もしくは「みんな〜やってるか!2」なんだけど、その期待が叶えられたのは正直、半分くらい。
 「菊次郎の夏」がカンヌで賞を捕らなかった時、水道橋博士がギャグで「審査委員長のクローネンバーグが『みんな〜やってるか!』でザ・フライをパロられたのを根に持ってたせい」と書いてたけれど、どうもこの北野武監督、自作がパロられのは苦手のようで、せっかくタイトルが「TAKESHIS'」、出てる役者も常連がたくさん、そして今までの作品を思い起こさせるシーンもたんまり、という自作をパロる絶好のシチュエーションにも関わらず、頑なにベタなパロディをしない。
 俺は冒頭の戦場を見て、たけしが満面の笑顔で「メリー・クリスマス。ミスター・クリトリス」と喋るシーンとか、たけし役のオーディションが行われ1000人以上が連続コマネチをするシーンとか、たけしとたけしの対決が「金髪座頭市VSソナチネヤクザ」で行われるとか、そういうサービス満点のシーンが当然あることを期待したのでちょっと失望した(そんなシーン誰が見たいのか、という問いには俺が見たい、と答えようぞ)。
 もちろん、この映画がもともと以前から監督が語っていた「フラクタル」の映画化であって、パロディの入る余地なんかないというのは分かるけれど、そんなら元々の構想通り監督に専念するべきであって、北野武主演である、というだけの中途半端なサービスなんかするな、と言いたい。あと、おっぱいスクラッチ京野ことみが断ったんなら削るべき。
 で、そんなにパロディを拒否してるなら、この映画はとがったアート映画になってもよさそうなんだけど、そこまで編集が変な訳でも理解不能な訳でもなくて見終わった後、監督に言われてるのは 「こんな えいがに まじに なっちゃって どうするの」 だと思うんだが(いやそうでなければ困る)、それだと結局、中途半端なバカ映画としかこちらとしてはいいようが無いのであった。まあ、俺は美輪明宏と砂浜銃撃シーンだけでも、見てよかったとは思ったけどね。