16ブロック (リチャード・ドナー) ★★★★1/2

 「タイムライン」の壊滅的な出来にもう終わりだな、と誰もが思った現在76歳となる映画監督リチャード・ドナー最新作。この映画の主役であるブルース・ウィリス演じる無気力なアル中ダメ刑事は、もちろんウィリスが過去幾度となく演じてきた刑事たちのその後といってもいい訳だが、同時に「タイムライン」を撮った後のリチャード・ドナーその人でもある。
 だからこそ、ウィリスが証人の危機を目の前にして"覚醒"し、鮮やかな銃の腕前を見せ付けるシーンは、そのショットの鮮烈さと共にリチャード・ドナーの"覚醒"シーンとしても記憶されるのだ(ちょっと言い過ぎ)。実はこの映画、公開が遅かったんで既にDVDで視聴済み、つまり2回目なんだけど俺がこのシーンでもうウルウルしてたのは秘密。
 おしゃべりなウザい証人役にはモス・デフ。相変わらず演技が達者すぎて見てると本当にウザいんだが、このウザさがあって後半めっちゃ泣かされる訳です。いやー監督の思い通りの観客だな俺。
 お話の展開はご都合主義との批判もあろうが、個人的にほぼリアルタイムで進行するこの映画の構成なら、全く許容範囲だと思う。ラストはDVDだと劇場公開版とは別のオリジナルエンディング(脚本通りらしい)が収録されていて、正直DVDで見たときは劇場版よりこっちが断然いいな、と思っていたんだけど今回映画館で見たら、やっぱり娯楽映画としてはこっちが正しいかな、と思い直した。なので、安心して劇場にいってらっしゃい。めっちゃ面白いから。