ダメなものは、タメになる テレビやゲームは頭を良くしている 感想

 一言で云うとゲーム・テレビ・映画・インターネット等ポップ・カルチャーが、昔と比べていかに複雑化しているかという事実を端的に現した本。著者はこの複雑化の軌跡を「スリーパー曲線*1」と名付け、特にゲーム・テレビでこの傾向が圧倒的であることを、たくさんの事例を紹介しながら示していく。映画はこの2つに比べるとそれほど進化してない事も。同意だけど。
 そして、こんな複雑なポップ・カルチャーを楽しむ現代人は、IQが年々高くなっているという事実もあるしバカになるってのは嘘よ、みたいな事を書いてあるんだけど、元々興味があったゲームの部分の記述よりもテレビドラマの記述の方がより興味深くて、現在のアメリカドラマ界が「マルチスレッド」と称される複数のストーリーが同時に進行して更にそれらが複雑に絡み合う構成が主流であること、そしてその一度見ただけでは理解出来ないほどの複雑さによりネット等を中心に話題が生まれ、結果DVDの売り上げガッポガッポ等の商売上のインセンティブもあること等、以前の日本アニメ界みたいな状態が紹介されております(いや、今のアニメ界知らんから)。
 確かに今のアメリカドラマはめっちゃ面白くて「デスパレートの妻たち」も「ザ・シールド」も「24」も「ホワイトハウス」も俺大好きなんですが、こういう複雑な構成のドラマを褒めたいがために『「ロー&オーダー」より「24」を見るべき』、と書いてある所はギャグっぽいけどさすがに頭を抱えまくり。だって米光さんも書いてある通り*2「24」の複雑さってそれを全部理解する事が必要な複雑さじゃないじゃん!それに『ロー&オーダー』について説明すると、このドラマは現在もアメリカで続いている刑事ドラマで、前半で刑事の捜査、後半でその事件の裁判を描くという、それ以外の無駄な物を一切描かない超ストイックな構成と扱う題材が野心的な事で有名な番組なので(最近では「ブレンダと呼ばれた少年」を扱ったり。参照→http://macska.org/article/73)、この番組と複雑さを比べる意味って無いよ! 他にも昔ながらの番組として「フレイジャー」や「The Office」等が切って捨てられているのは、まあ本書の主張を明確にする為だとはいえ、ちょっとカチンときた。あと、やっぱり褒められていた「LOST」は絶対「複雑さ」の広げ方が間違ってるドラマだと思うぞ。
 


 結論としては、早く日本でも「ロー&オーダー」のセカンドシーズン以降と「フレイジャー」のフォースシーズン以降と「ザ・シールド」のサードシーズン以降を早く出せ!ってことで。

*1:これは元々3時間を越える前後編のSF大作になる予定だったことで御馴染み(か?)、ウディ・アレンの映画「スリーパー」から取っている。理由はいまいち理解できんかった。

*2:http://blog.lv99.com/?eid=570713